同じ練習を繰り返しているのに、なかなか動きが変わらないことがあります。できない原因は人によって異なり、単純に反復回数を増やすだけで解決するとは限りません。

大久保メソッドは、誰にでも同じ効果が出る魔法の練習法ではありません。プレーを観察して原因を分け、その人に必要な感覚が得られるように練習そのものを組み替え、最後は試合に近い条件へ戻して確認する考え方です。

大久保メソッドとは

できない動作を単純反復させない

見た目のフォームだけで判断せず、姿勢、肩や握りの力み、打点、ラケット準備、速い球に対する身体の反応まで分けて見ます。原因と異なる練習を重ねないためです。

本人にも原因を理解してもらう

何を変えるのかだけでなく、なぜ今の動きになるのかを一緒に整理します。本人が違いを理解すると、練習中に自分で確かめる基準を持ちやすくなります。

最終目標は試合で使えること

止まった状態で形が整うだけでは終えません。遅い球から始め、判断や移動を伴う条件へ少しずつ戻し、試合の中で使える動きになっているかを確認します。

上達しない原因をどのように見るか

個別技術の正解を一つに決めるのではなく、その人の動きの中で何が次の動作を妨げているかを見ます。

姿勢と身体の土台

構えたときの重心、膝の使い方、打つ前後の身体の傾きを見ます。上半身だけを直す前に、安定してラケットを動かせる土台があるかを確認します。

肩・腕・握りの力み

最初から握り込んでいないか、肩や腕に力が入り続けていないかを見ます。力を入れる位置とタイミングが、ラケット操作を妨げていないかを整理します。

打点とラケットの準備

シャトルに触れる場所だけでなく、その直前にラケットをどこへ準備しているかを確認します。フォームや打点の課題は、準備の遅れから生じる場合もあります。クリアが飛ばない原因の記事でも具体例を紹介しています。

速い球に対する身体の反応

球速が上がった瞬間に身体が固まる、のけぞる、ラケットを引くといった反応を見ます。技術以前の反応が操作を難しくしていないかを確かめます。レシーブの考え方はドライブレシーブの記事で詳しく説明しています。

フットワークと打つ位置の関係

足の速さだけでなく、移動の開始、歩幅、止まる位置と打点の関係を見ます。手のフォームを直す前に、無理なく打てる場所へ入れているかを確認します。

大久保メソッドの6つの工程

工程は一直線に進むとは限りません。実戦へ戻したときに崩れれば、前の工程へ戻って原因を見直します。

  1. プレーを観察する

    確認
    いつ、どの条件で動きが崩れるか。
    理由
    本人の感覚と実際の動きの差を捉えるため。
    次へ進む判断
    再現しやすい場面を特定できたら原因を分けます。
  2. 原因を分解する

    確認
    姿勢、力み、打点、準備、移動、身体の反応。
    理由
    一つに見える失敗にも複数の要因があるため。
    次へ進む判断
    優先して確かめる原因を絞れたら練習を組みます。
  3. 必要に応じて動きを制限する

    確認
    余計な動きを減らすと目的の操作がしやすいか。
    理由
    原因となる動作と必要な動作を区別するため。
    次へ進む判断
    違いを感じ取れたら通常に近い条件へ戻します。
  4. 正しい感覚を作る

    確認
    力の抜き方、ラケット位置、打点を本人が区別できるか。
    理由
    言葉だけでなく身体で判断できる基準を作るため。
    次へ進む判断
    ゆっくりした条件で再現できたら速度を上げます。
  5. 速度と難易度を段階的に上げる

    確認
    球速や移動が増えても動きの要点を保てるか。
    理由
    急に実戦速度へ戻して元の癖が出るのを防ぐため。
    次へ進む判断
    中間速度でも安定したら実戦条件へ進みます。
  6. 実戦へ戻して確認する

    確認
    判断や相手の動きが加わっても使えるか。
    理由
    練習だけで終わらず試合につなげるため。
    次へ進む判断
    崩れる条件があれば観察へ戻り、再調整します。

なぜ動きを制限するのか

椅子に座る練習の目的

椅子は、下半身のぐらつきや身体が後ろへ逃げる動きを一時的に減らし、上半身とラケットの反応を見やすくする手段です。座ること自体が上達につながるわけではありません。

余計な動作を減らして感覚を見つける

複数の動作が同時に起きると、何が妨げになっているか分かりにくくなります。一部の動きを減らし、ラケットを身体の前へ出す感覚など、確認したい要素に集中します。

通常動作へ戻すことが前提

制限した状態で得た感覚は、立った姿勢、移動を伴う練習、実戦に近い球速へ順に戻して確かめます。原因が下半身や身体の逃げにない場合は、椅子を使わないこともあります。

実例|60代男性のスマッシュレシーブ

対象:60代男性

経験:バドミントン約5年

悩み:速いスマッシュで身体が硬直し、上半身が逃げたり、身体を曲げてレシーブしてしまう。

  1. 観察

    ゆっくりした球ではラケットを動かせる一方、球速が上がると腕だけでなく身体全体が大きく反応する様子を確認しました。

  2. 原因分解

    速い球への防衛的な反応、身体の土台の不安定さ、握りの力み、ラケットを身体の前へ準備できていないことを分けて確認しました。

  3. 動作制限

    椅子に座って下半身と身体が逃げる動きを減らしました。さらに足を浮かせた不安定な状態も体験し、土台が動くとレシーブ操作が難しくなることを本人と確認しました。

  4. 正しい感覚

    • ラケットを身体の前へ置く
    • 膝を軽く曲げて構える
    • 最初から握り込みすぎない
    • 親指だけを強く意識しすぎない
  5. 段階練習

    姿勢とラケット位置を確認しながら、球速を一段ずつ上げました。

    遅い球少し速い球実戦に近い速度

  6. 実戦確認

    球速を上げた条件でも、身体の前で安定して対応できる方向へ動きが変化しました。今後も実戦条件で崩れる場面を観察しながら調整します。

ほかの課題への応用

初心者のフォーム改善

見本の形に一度で合わせるのではなく、握り、構え、ラケットの軌道、打点を一つずつ確認します。シャトルに当たる条件を見つけ、止まった練習から簡単な移動を伴う練習へ進めます。本人が違いを説明できるかも確かめ、無理なく再現できる形を探します。

力みが強い人

「力を抜く」と伝えるだけでなく、肩、腕、指のどこに、いつ力が入るかを観察します。軽く持てる条件と打つ瞬間に必要な力を分け、球速を上げても余計な緊張が増えないか確かめます。崩れたときは速度を戻し、力が入るきっかけを改めて整理します。

打点が安定しない人

打点だけを前後へ動かさず、ラケット準備の時期、身体とシャトルの距離、足が止まる位置を確認します。ゆっくりした配球で合わせた後、コースやタイミングの変化を加えます。どの条件でずれるかを本人と共有し、判断を伴う配球へ段階的に戻します。

フットワークと打つ位置が合わない人

足数を増やす前に、動き始める時期、最後の一歩、身体が止まる位置を見ます。無理なく打てる場所とのずれを整理し、短い移動からラリーの中での移動へ戻します。ラケット準備との順序も確認し、急いだときに同じずれが出ないかを確かめます。

練習ではできるが試合ではできない人

球出しではできる条件と、試合で崩れる条件の違いを探します。球速、コース、判断、相手の動きなどを一度に増やさず、要素を段階的に加えて実戦へ近づけます。崩れる境目が分かれば一段階戻し、再現できる条件を少しずつ広げます。

大久保メソッドが向いている方

  • 同じ練習を続けても改善しにくい方
  • 練習ではできても試合では再現しにくい方
  • 自分のフォームの問題が分からない方
  • 速い球に身体が固まりやすい方
  • 自己流の癖を整理したい方
  • 原因を理解して練習したい方

課題や目標、練習への取り組み方によって合う進め方は異なります。すべての方に同じ方法を当てはめる考え方ではありません。

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